桑名市「こどもの権利条例」策定検討会議の傍聴

現在、桑名市では「子どもの権利条例」の制定に向けての検討が進められています。
本年9月の定例会への議案提出予定で、すんなり決まれば、数カ月後に施行されることになると思われます。

ただし、「現委員の任期内で条例策定を目指すものの、更なる検討が必要な場合は、現委員を中心とした特別委員会の設置も状況に応じ検討していく。」とされています。後で詳しく触れますが、条例の制定は手段であって目的ではないと思います。臨機応変な対応が求められるべきでしょう。

(参考)第1回子どもの権利条例策定検討会議の結果
https://www.city.kuwana.lg.jp/documents/10868/kentoukaigi_1.pdf

私は、法律の専門家でも子どもの権利についての専門家でもないですが、システム監査技術者という資格を持ち、これまで様々な企業内のルール作りに携わってきました。その経験を元に、少し思うところを書いてみたいと思います。

そもそも、条例は何のために作るのでしょうか?
一言で言えば、「子どもの権利」を、しっかりと守るためということになると思います。

市の条例がなくても、国連総会で決められた「子どもの権利条約」に日本は批准しているし、昨年4月に施行された「こども基本法」もあります。また、三重県には「子ども条例」もあるため、それらに定められたことがしっかり守られていれば、子どもの権利は守られているはずです。しかし、現実問題として、十分に守られているようには感じません。

市の条例を制定する意味については、個人的には以下の3つが大きいと考えています。
①市民への啓蒙
②行政の計画に対する継続性の担保
③刑罰規定や過料を置くことによる実効性の確保


現在、桑名市では教育福祉委員会によって、市民アンケートや学校でのワークショップを通して、意見集約が進められていますが、これは、①の市民への啓蒙の意味で、とても大きな意味があると思います。
条約やこども基本法があっても、中身まではほとんど市民に浸透していないので、市の条例をきっかけにして、「子どもの権利」について啓蒙することに繋がります。


そして何より、完成した条例を周知徹底することは、更に重要だと思います。
アンケートやワークショップに参加した市民も、数ヶ月もすれば、すっかり忘れてしまうことでしょう。
私の周りには、子どもに関わる市民活動をされている方が多いので、そういった方は、「子どもの権利」について常に考えられてますが、同じレベルの意識を持って、普段、生活されている市民の方はほんの僅かでしょう。
子どもの権利に関連するイベントも、時折、開催されていますが、参加者の顔ぶれはいつもだいたい決まっています。
教員を対象にしたアンケートですら、「子どもの権利」について内容までよく知っていると答えたのは2割程度です。
どんなに立派な条例ができても、周知徹底されていなければ、絵に描いた餅です。


津市や松阪市に問合せたところ、市独自の条例は、今のところ作る予定がないということでした。
理由としては、「三重県子ども条例」の趣旨に従って、「子ども・子育て支援事業計画」に落とし込んでいくから、必要としていないということでした。
つまり、市の条例はなくても、行政としては、子どもの権利を大切にした市政を進めることができるんですね。

但し、事業計画に継続性を持たせるためには、条例の下支えがあった方が安心ですし、場合によっては罰則規定を設けた方が良い状況もあるかも知れません。
そういう意味で、②や③を、条例を制定する意味に挙げました。

他県に目を向けると、子どもファーストの市政を推進して成果を上げていることで有名な明石市には、「明石市こども総合支援条例」というものがあります。
子どもの権利に特化した条例ではありませんが、総合支援条例の一番の目的を「こどもの最善の利益」として、様々な政策が実現されています。
ちなみに、明石市の条例は、施策については細かく列挙しないタイプの理念中心型条例になっていますが、それでも色んな取り組みができるんですね。

明石市のウェブサイトに条例の検討ステップが掲載されていたので、参考までに引用させていただきます。
現在、桑名市で進めているように、学校やパブリックコメントから意見を集めていることが分かります。
平成28年5月から検討を開始して、同年12月に市議会にて条例案の提案及び審議されて、翌年4月に施行されています。

明石市こども総合支援条例

「(仮称)明石市こども総合支援条例」の制定について

http://www.edi.akashi.hyogo.jp/kyoiku/shakai_kyouiku/pdf/04_syakyo2807_siryou2.pdf

ここまでを整理すると、
①条例は「子どもの権利」を守るための手段の一つである
②条例がなくても、市として「子どもの権利」を守るために、様々な取り組みを推進することは可能である

③条例制定の各ステップは手段であって、それ自体が目的ではない
ということが言えると思います。
常に、真の目的を意識していないと、手段が目的化して方向性がずれてしまいます。
これは、社内規定でも、家庭内のルールでも、条例でも同じことが言えると思います。

条例作りがゴールでもなければ、条例ができさえすれば、万事うまくいくというものではありません。
条例作り、ルール作りは、目的達成のためのスタートに過ぎないんだろうなと思います。

条例の検討は、桑名市議会教育福祉委員会で9名の市議会議員を中心に進められておりますが、その内、6名は面識がある方ということもあり、私のところにも様々な声が聞こえてきます。
議員さんそれぞれに「良い条例」を作ろうと、一所懸命に取り組まれていますが、条例を作る目的について、そもそも論のお話を聞く機会がないので、当サイトの管理人としての個人的な見解を書かせていただきました。

桑名市議会教育福祉委員会は、市民の傍聴も可能です。
どんなことが話されているのか、傍聴に参加してみませんか?

また、桑名市では、CCN(子ども応援ネットワーク in くわな)さんが、独自に勉強会を開催されるなど、条例制定に向けて、とても熱心に活動されていらっしゃいます。
機会があれば、ぜひ、参加してみてくださいね。


【補足】

「子どもの権利」とは何か?

以前、ユニセフでは、大きくわけて、以下の「4つの権利」として説明されていました。
①生きる権利
②育つ権利
③守られる権利
④参加する権利

しかし、子どもの権利条約には、他にも様々な権利が記されており、4つだけしかないと、誤解を招く恐れがあるため、現在は、以下の「4つの原則」で説明されています。

①差別の禁止(差別のないこと)
 すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されます。
②子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)
 子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考えます。
③生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)
 すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。
④子どもの意見の尊重(子どもが意味のある参加ができること)
 子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。

と説明されています。

今、子どもたちに、どんな問題が起きているのでしょうか?

①いじめ・差別
②自殺
③虐待
④犯罪・非行
⑤性犯罪被害
⑥ひきこもり
⑦貧困
⑧教育格差/体験の格差
⑨自己肯定感の低下
⑩家庭内に安心・安全な居場所がない
等々、他にもいろいろあると思います。

これらの問題の原因は、家庭、教育現場、社会環境など、様々なことが考えられます。

いずれにしても、子どもの権利を守るためには、子ども自身と子どもに関わるすべての大人が、「子どもの権利」について知り、子どもに対して適切に関わることが求められます。

現在、桑名市だけでなく、亀山市や鈴鹿市でも、条例の検討が進められ、四日市でも今後、計画されています。
ぜひ、興味を持って、いただけたらと思います。